不当解雇

会社を経営者している方であれば、従業員を解雇しなければならない場面が訪れることがあります。
経営上の理由、当該従業員の能力、勤務態度、そして不祥事に対する懲戒としてなど、解雇には様々な種類がありますが、いずれの場合でも、好きで従業員を解雇するような経営者はいません。

皆、悩みに悩んだ末に解雇という決断をしているのです。  

しかし、経営者がこのような苦悩の決断を下したにもかかわらず、現行の法制度、労働者有利の裁判実務では、経営者が解雇の方法を少しでも誤ると、不当解雇と認定されてしまい、会社は思わぬ損害を被ってしまうことがあります。  

ここでは、不当解雇とならないよう、解雇の種類や方法、解雇の制限について解説していきたいと思います。


Q 解雇にはどのような種類があるのですか?

A まず、大きく分けて普通解雇と懲戒解雇があります。
普通解雇とは、懲戒解雇以外の解雇を指します。普通解雇の中には、能力不足や勤務態度の不良など従業員側に理由があるために行われる解雇と、経営上の理由(事業の縮小に伴う人員整理など)による整理解雇があります。

これに対し、懲戒解雇とは、職場秩序違反に対する制裁として行われる解雇を言います。従業員に対する最も重い懲戒処分となります。また、懲戒解雇が相当なケースで、従業員が反省している等情状酌量の余地がある場合に、懲戒解雇より処分を若干軽減した解雇を行うことを諭旨解雇と言います。


Q 当社にとって極めて重要なプレゼンがあり、1人の従業員に任せたのですが、あろうことかその従業員は当日寝坊によりプレゼンに遅刻し、プレゼンを行うことができませんでした。当該従業員の寝坊により、社長である私も大恥をかきました。   

会社としては当該従業員を許せないので解雇したいと考えています。解雇は許されるでしょうか。


A 労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定し、解雇権濫用法理を採用しています。これは、解雇という行為が従業員の生活の糧を奪われる重大な行為である点に鑑み、会社の従業員に対する自由な解雇を法律で制限したものです。

労働契約法は平成20年に施行された法律であり、それまではこのような解雇権濫用法理の規定は存在しませんでしたが、最高裁を含む裁判所では、長年にわたり解雇権濫用法理を採用してきており、それを明文化したものがこの労働契約法16条になります。   

解雇権濫用法理の下では、従業員を解雇するには、その従業員を会社から廃除するのがやむを得ないと考えるだけの合理的理由が存在し、社会一般の感覚からして解雇をするのが相当であると言えるような状況が必要となります。具体的には、重大な刑法上の犯罪行為などがある場合(多額の業務上横領等)には即解雇が認められる可能性がありますが、そうではなく、遅刻や業務上の軽微なミスがあるという程度では解雇は許されません。

こういった軽微なミスが積み重なり、会社としても当該従業員に何度も注意を重ね、それでもなお遅刻やミスを繰り返すような場合に初めて解雇は有効と認められます。余程の事情でない限り一発レッドカードは許されず、イエローカードを何枚も出さなければならないということです。   

本件の場合、記載されている以外の事情の存否にもよるでしょうが、上記の事情のみでは解雇はまず認められません。   

本件のような分かりやすいケースであれば解雇の可否の判断はできますが、実際の事案では解雇の可否の判断は非常に微妙なケースが多いです。そのため、解雇を行う際には、必ず弁護士など法専門家に事前にご相談いただくことをお勧めいたします。法専門家への相談により、過去の裁判例で近いケースがあることなどが分かれば、解雇の可否を判断する1つの指針になります。


Q 当社は現在、経営の危機に瀕しています。業務が減ってきているにもかかわらず従業員の数は変わらないため、人員を整理する必要があります。従業員何人かを解雇しようと考えているのですが、解雇は認められるでしょうか。また、解雇できる場合には、誰を解雇するかは会社が決めて良いのでしょうか。

A 本件はいわゆる整理解雇のケースです。整理解雇においても、解雇権を濫用してはならないため、解雇は慎重に行わなければなりません。判例は、整理解雇を行うためには4つの要件を満たす必要があるとしています。①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人員選定の合理性、④手続の相当性の4つの要件です。  

①人員削減の必要性は、整理解雇である以上、当然必要になります。経営赤字が何年も続いている、会社の売上に対し人件費が相当に高額になっている、不採算部門を閉鎖するなどの具体的な事情が必要となります。   

②解雇回避努力とは、人員削減手段として、従業員にとって最も苛酷である解雇という手段をとる前に、よりダメージの少ない他の手段をとる必要があるということです。例えば、希望退職者を募る、役員の報酬をカットするなどの手段です。   

③人員選定の合理性とは、誰を解雇するかにつき客観的に合理的な基準を定め、その基準に公正なあてはめをして解雇対象者を決めなければならないということです。人選の基準は、勤務成績などの能力面、雇用形態(正社員かアルバイトかなど)、当該従業員を解雇した場合にその家計への影響がどの程度あるか(夫婦共働きかどうかなど)など、様々な面から決まります。重要なのは、会社が恣意的に従業員を選定することなく、客観性の高い基準となっているかどうかです。   

④手続の相当性とは、解雇までに従業員に対して、解雇の必要性、解雇の時期、方法等を十分に説明し、解雇対象者の言い分を十分に聞き、最終的に解雇に納得してもらうなど、会社は従業員と誠意をもって協議を行う必要があるということです。   

以上のとおり、①から④の要件の充足が必要となるため、本件では経営不振により①人員削減の必要性が存在するのであれば、残りの②から④の要件を満たす必要があります。まずは希望退職を募るなど、②解雇回避努力を検討し、④解雇につき従業員と誠実に交渉する必要があります。その上で、誰を解雇するかを勝手に決めるのではなく、恣意的な選定とならないように客観的な基準を設け、③人員選定の合理性が認められる場合に、整理解雇が認められるということになります。


Q 当社では、明らかに能力不足であると認められる従業員1名を解雇することを決定したのですが、いつ付けで解雇とすれば良いのでしょうか。あと1週間で月が変わるので、そのタイミングで解雇として良いでしょうか。

A 労働基準法20条では、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と定められています(※日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、試用期間中の者には一定の例外を除きこの規定は適用されません。

また、天災事変その他やむを得ない事由のために事業継続が不可能となった場合、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合には、労働基準監督署長の認定を受けた場合にはこの解雇予告の義務は除外されます。)。従業員は、いきなり解雇されてしまうと生活の糧を失うこととなってしまうため、解雇をする場合にはせめて1か月前に告げるか、1か月分以上の賃金を支払うことを会社に義務づけたものです。   

このような解雇予告制度が存在するため、本件では、1か月後をもって解雇することを告げるか、月末をもって解雇するのであれば少なくとも1か月分の賃金を支払うという手続をとる必要があります。


Q 解雇を行うには色々な規制があるようですが、解雇権濫用法理、解雇予告制度を満たしていれば従業員を解雇することができると理解すれば良いでしょうか。

A 解雇権濫用法理、解雇予告制度は解雇において問題になりやすい規定ですが、実は他にも解雇に関する法規制は多数存在します。以下、いくつか列挙してみます。

契約社員の中途解雇の制限(労働契約法17条) 期間の定めのある雇用契約の場合、やむを得ない事由がない限り中途解雇はできないとされています。
業務上の傷病による休業期間中の解雇の制限(労働基準法19条) 一定の例外を除き、従業員が業務上の傷病により休業している場合には、その期間及びその後30日間は、解雇はできないとされています。
産前産後の休業期間中の解雇の制限(労働基準法19条) 一定の例外を除き、出産を予定する従業員が休業している場合には、その期間及びその後30日間は、解雇はできないとされています。
解雇における均等待遇(労働基準法3条) 従業員の国籍、信条、社会的身分を理由として解雇をすることはできないとされています。
婚姻、妊娠、出産を理由とした解雇の禁止(雇用機会均等法9条) 女性従業員が婚姻、妊娠、出産したことを理由として解雇してはならないとされています。また、妊娠中及び出産後1年を経過しない女性従業員に対する解雇は無効とされています。
従業員の特定の行為に着目した解雇の禁止 従業員が会社の労働基準法違反、労働安全衛生法違反の事実を労働基準監督署などに申告したことを理由に解雇することは禁止されています(労働基準法104条、労働安全衛生法97条等)。

従業員が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたり、あっせん手続を申請したことを理由に解雇することは禁止されています(個別労働関係紛争解決促進法4条、5条)。 従業員が公益通報を行ったことを理由に解雇することは禁止されています(公益通報者保護法3条)。

従業員が労働組合員であること、労働組合に加入したこと、結成したこと、労働組合の正当な行為をしたこと、労働委員会に申し立てをしたことを理由に行った解雇は無効とされています(労働組合法7条)。

従業員が被保険者になったこと又は被保険者でなくなったことを厚生労働大臣に確認する請求をしたことを理由に解雇することは禁止されています(雇用保険法73条)。

従業員が育児・介護休業の申出をしたこと、育児・介護休業をしたことを理由に解雇することは禁止されています(育児介護休業法10条等)。
このように、解雇に関する法規制は多岐にわたっており、思わぬ見落としをしてしまう可能性があるため注意が必要です。


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