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コラム

2020.11.19コラム

相続法改正 遺留分①


遺留分制度とは、被相続人が有していた相続財産について、その一定割合の承継を一定の法定相続人(兄弟姉妹以外)に保障する制度です。
本来、被相続人は自分の財産を自由に処分できるはずですが、相続制度は、残された遺族の生活保障や遺産形成に貢献した遺族の潜在的持分の清算といった側面があり、被相続人の財産処分の自由と被相続人の保護の調和を図ることが制度の趣旨と言われています(『改正相続法と家庭裁判所の実務』2020年1月30日 著者 片岡武、菅野眞一 参照)。

東野圭吾さんの小説、「危険なビーナス」がドラマ化されていますが、この小説で説明すると、とある資産家が全財産を孫に相続させると遺言を残して亡くなっても、その孫が全財産を相続できるわけではなく、ほかの相続人も、一定額の遺産をもらえますよ、という制度です。

それでは、遺留分として認められる一定割合がどのくらいかというと、法定相続分の1/2です。

例えば、父親が死亡し、法定相続人が妻、長男、二男の場合
各自の法定相続分は

妻  1/2
長男 1/2×1/2=1/4
二男 1/2×1/2=1/4

ですので

各自の遺留分は
妻  1/2×1/2=1/4
長男 1/4×1/2=1/8
二男 1/4×1/2=1/8
となります。

亡くなった父親の遺産が預貯金1000万円だった場合、各自の遺留分は
妻  1000万円×1/4=250万円
長男 1000万円×1/8=125万円
二男 1000万円×1/8=125万円

となります。

この事例で、仮に父親が、全財産を長男に相続させるとの遺言を残していても、遺留分侵害請求権を行使すれば、妻は250万円、二男は125万円をもらうことができます。

それでは、遺留分を計算する際の遺産は、死亡したときに残っていた財産だけかというとそうではありません。死亡したときに残っていた財産だけが考慮されるのであれば、全財産を生前に贈与し、死亡時の財産をゼロすることで遺留分を否定できてしまいますが、これでは、遺族の生活保障や遺産形成に貢献した遺族の潜在的持分の清算という遺留分の制度趣旨に反します。

というわけで、一定の生前贈与された財産を死亡時の財産に加算します。

遺留分を算定するための財産の価額は
➀相続開始時における被相続人の積極財産+➁相続人に対する生前贈与(原則10年以内)+➂第三者に対する生前贈与(原則1年以内)-被相続人の債務の額

という方法で計算します(民法1043条、1044条)。

このうち、相続人に対する生前贈与が、原則10年以内に限る(1044条3項)という部分が、法改正による追加された部分です。改正前は、相続人に対する生前贈与であり、特別受益に該当する贈与は、何年でも遡ることになっていました。

具体的にどのように変わったのかというと、

父親の死亡時、遺産として1000万円の預貯金があり、かつ、父親が長男に対し、亡くなる11年前に1000万円を生前贈与(特別受益に該当するものとします)していたとします。

法改正前は、相続人に対する生前贈与は10年以内に限られませんので、遺留分を算定するための財産の価額は

1000万円+1000万円=2000万円

となります。

そして、

妻の遺留分は1/4ですので、
2000万円×1/4=500万円
が妻の遺留分となります。

二男の遺留分は1/8ですので、
2000万円×1/8=250万円
が二男の遺留分となります。

他方、法改正後、相続人に対する生前贈与は、原則として、相続開始前の10年間の贈与に限り、遺留分を算定するための財産の価額に含まれるため、11年前の生前贈与は考慮されません。

そのため、遺留分を算定するための財産の価額は1000万円となり、

遺留分は、
妻  250万円
二男 125万円

となり、改正前よりも請求できる金額が少なくなります。
今回の法改正は、遺留分を請求する方にとっては不利、請求される方にとっては有利な改正です。


それでは、先ほどの事例(父親が全財産を長男に相続させるとの遺言を残している事案)で、父親の死亡時に1000万円の生前贈与を受けたのが二男だった場合、遺留分を算定するための財産の価額として1000万円の生前贈与は考慮されないとして、二男の具体的な相続分を計算する際にも全く考慮されないのでしょうか?この点は次回。