法人破産・会社整理

法人破産・会社整理について

「破産」は、経営者の皆様にとっては最終手段であり考えたくもないことかもしれません。

ただ、経営者としての責任を最後まで果たすという意味で、裁判所の手続きで財産関係や法的関係を整理することが必要です。

法人破産の手続きを検討する目安

法人破産の手続きを開始するためには、法人が「支払不能」または「債務超過」に陥っている場合であることが要件となります。

「支払不能」とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済をすることができない客観的状態にあることをいいます。

より具体的に説明しますと、一時的な資金不足ではなく、継続的に債務が支払えない状態に陥っており、仮に借り入れ等で一時しのぎをしたとしても、その結果、次に弁済期がやってくる別の債務を支払うことが出来ず、この繰り返しによって継続的に弁済出来ない状態に陥っていることが客観的に見てとれる場合は、支払不能といえるでしょう。

「債務超過」とは、債務者(法人)が、その財産をもって完済することができない状態のことをいいます。より具体的には、客観的に見て債務額の総計が資産額の総計を超過している状態にあるということです。

法人破産の流れ

1.初回相談

まずは、担当弁護士が法人の代表者(又は代理の方)から以下の内容についてお話を伺わせていただきます。

・法人の負債額とその内容

・負債増加の原因と経緯

・租税公課の滞納の有無と状況について

・過去の法人の収支状況・資金繰りについて

・従業員の人数と雇用状況・解雇の予定の有無

・法人の資産の種類(現預金、不動産、自動車、什器等)と評価額

2.正式受任と債権者等への連絡

破産の申立てに向けて、正式に受任することになった場合には、法人の状況を踏まえた上で、法人の債権者らに一斉に「受任通知」を送付します。これは、破産手続が正式に開始される前に、債権者に破産予定であることを通知するためのものです。

ところが、法人の規模や状況によっては、受任通知を行うことで債権者からの連絡が殺到したり、各店舗や事業所に債権者が直接来訪したり、在庫を勝手に持ち出す、などといった混乱が生じる場合もありますので、場合によっては破産手続開始前の通知を行わない場合もあります。

受任通知には、法人が債務超過または支払不能の状態にあり、裁判所に破産手続開始の申立てを行う予定であること、そして、以降の法人への連絡は、担当弁護士宛てに行う旨の依頼文を記載します。

3.必要な現地調査

初回の相談を行った後できるだけ早いうちに、本社の状況を確認させていただき、本社以外の事業所や工場・店舗等がある場合には、必要に応じて担当弁護士が現地に赴き、調査をさせていただきます。

担当弁護士が破産手続きに必要な書類を確保したり、工場や店舗に置かれている在庫の種類や数を正確に把握する目的があります。

4.申立て

担当弁護士が法人破産の申立てを行うまでにご準備いただく必要がある資料は、下記のとおりです(法人の状況によりますので、常に全ての資料が必要になる訳ではありません)。

下記の他にも、担当弁護士が法人の状況に応じて資料準備のための指示をさせていただきます。)必要な資料がすみやかに揃うことで、迅速な法人破産の申立を行うことが出来ます。

・法人の履歴事項全部証明書または商業登記簿謄本

・破産申立てにつき会社の意思決定が適法に行われたことを示す書面

・取締役会議事録 または 取締役全員の意見の一致を証する書面など

・事業につき官庁等の機関の許可が必要な場合 許可証写し

・決算報告書(最低でも直近3年分)

・賃貸借契約書写し、リース契約書写し、仕掛かり工事等の契約書写し

・法人名義の預金通帳写し、当座預金取引推移明細表写し

・不動産登記事項証明書写し、固定資産評価証明書写し

・就業規則写し、退職金規程写し、賃金台帳写し

・訴状写し、競売開始決定写し、差押調書写し

5.破産手続開始決定

破産手続の開始決定後、裁判所は、1週間程度で「破産管財人」という立場の弁護士を選任します。

この破産管財人は、破産手続が開始した法人の財産関係を一挙に管理する立場ですので、破産管財人が選任された時点で、法人の財産は基本的に破産管財人以外の者が手を付けることは出来なくなります。

法人の預貯金、不動産の権利証、自動車と車検証、商品等の在庫などを含め、全て破産管財人の管理下に置かれます。

6.破産管財人との面談

破産管財人は、法人の財産を管理するだけでなく、財産の中に、財産的価値があるものがあれば、これを換価して現金に換え、各債権者に平等に配当するという役割を担っています。

このため、破産管財人は、選任後できるだけ早く法人代表者と面談し、法人の財産関係を正確に把握することになります。

もし、法人代表者が、破産管財人の調査に非協力的な場合は、それ自体が、破産手続の上で問題視されますので、法人代表者は、嘘偽りなく破産管財人の調査に誠実に対応する必要があります。

7.債権者集会の開催・出席

破産手続が開始した後、約3ヶ月後をめどに、第1回目の「債権者集会」が開かれます。債権者集会とでは、破産管財人が、破産会社の財産の調査結果や今後の見通しを債権者に向けて報告します。

破産会社の代表者は、債権者集会に代理人弁護士と一緒に参加していただきます。

出席者は、裁判官、破産管財人、破産者(破産会社の代表者)、破産者代理人弁護士、そして破産会社に債権を有する債権者です。

法人代表者にとっては、破産申立て後、初めて債権者側と顔を合わせる機会になります。また、債権者集会では、債権者から質問が出てくる場合もありますので、破産の経緯などについて、法人代表者が回答をしなければならない場面も出てくるかもしれません。ただ、実際に債権者集会で、債権者側から質問が出る場面は、稀ですし、質問が出そうな場合にはあらかじめ担当弁護士が法人代表者の方と事前準備をして臨むことになりますので、ご心配は無用です。

会社破産手続きの弁護士相談「お悩みの声」

会社の破産手続には、どのような費用が掛かりますか?
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①裁判所に破産を申し立てる作業を弁護士に頼む費用と、 ②裁判所に申立後、破産直前の不正な出費や財産隠匿の有無等を調査させるために裁判所が選任する「破産管財人」の費用を裁判所に納める必要があります。

①、②の金額のいずれとも、債務総額の金額や、予想される作業量によって個別に協議の上決定することになりますが、以下の金額が一応の目安となります。

例えば、10社に対する債務の合計額が4000万円の会社の場合、破産申立には、 ①+②=概ね80~100万円前後の費用が必要になります。

【①の費用目安】 (債務総額 法人) 5000万円未満40~70万円 ~1億未満50~100万円 ~5億未満80~200万円 ~10億未満100~300万円 ~50億未満200~400万円

【②の費用目安】 (債務総額 法人) 5000万円未満30~70万円 ~1億未満100万円 ~5億未満200万円 ~10億未満300万円 ~50億未満400万円

事業継続か、破産か、大変に迷っています。何か、判断に当たって考慮すべき事情はありますか?
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非常に悩ましい問題です。経営者である以上、会社の存続と従業員の生活を考え、潰すという選択を最後まで取らず、最後まで無理を続けて頑張り続けてしまうものだと思います。

ただ、債権者への損害を拡大することでもあり、破産の選択も、経営者の責任です。手続を無事に進められる費用を確保できる時点でこの選択も視野に入れながら、タイミングを逃さずに慎重に検討する必要があります。

再生手続を採る場合には、負債を減額した場合には黒字経営を達成できる見込みがある、あるいは、スポンサーの確保が必要になってきます。 難しい選択の場面ですので、弁護士にお気軽に、その悩みについてもご相談ください。

上記の費用をどうしても用意できないのですが、他の会社は一体どのようにして費用を捻出しているのでしょうか?
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費用を捻出できなければ破産の申立ができませんので、親族らからの援助を受けられない限りは、弁護士が受任通知を送付して支払をストップしつつ、債権回収を図ったり、資産を換価するなどして破産申立費用を捻出するほかありません。  

この間、債権者には、弁護士が交渉窓口になって、皆様への直接の接触をお控えいただくように交渉します。

もっとも、費用の捻出が困難な中でのご依頼であることが大前提ですので、申立手続に必要な書類の取寄せや書類作成のうち、ご自身でできることをご自身で行っていただくことで、費用を削減できる場合もありますし、通常、管財人に任せる廃棄物の撤去費用や原状回復あるいは債権回収作業等を事前に行うなどして管財人の労力を減らすことにより削減できる場合もありますので、詳細はお問い合わせ下さい。上記の費用は、あくまでも一応の目安に過ぎません。

裁判所への予納金を減らすために、破産申立前に、自分で不動産や自動車の売却、廃屋や廃棄物の解体・撤去、債権回収等を行って良いのでしょうか?
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いずれの作業も、価格等の適正さが問われますので、破産手続きの費用が用意できる限り、基本的には破産管財人に委ねるか、弁護士に依頼して行うべきです。

予納金が高額で準備できない場合には、申立前にこれらの作業を弁護人の関与の下、適正に実施して管財人の労力を減らすことで、予納金の金額について柔軟に判断してもらえる場合もありますが、当事務所では、不動産鑑定士・不動産業者や中古車業者、解体業者らとの豊富な人脈があり、極力安価に実現できるよう最大限のご協力を致します。

また、当事務所は、破産管財業務も継続的に行っているため、管財人の観点から問題ある行動と問題ない行動を適切に分類し、破産直前の切迫した時間の中で、会社の実情に応じ、後で問題が発生することのないよう、適切かつ現実的なアドバイスを行うことが可能です。

破産の申立を検討しています。特にお世話になった取引先に対する支払いを済ませてから申し立てたいと思いますが、問題はありますか?
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破産の申立をする場合には、全ての債権者の平等扱いが厳しく求められます。 仮にご質問のようなことをしてしまった場合には、破産管財人がその支払を否認(取消し)して回収を図ることになり、かえって取引先に迷惑を掛けることになりますので、そのようなことは辞めましょう。  

債権者の平等を害することになるのか判断が困難なケースもありますので、弁護士の判断を仰ぎながら慎重に進めましょう。

従業員に対する給与の支払いができません。破産申立の費用に充てるくらいならば、少しでも従業員に支払った方が良いのではないでしょうか?
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破産手続の開始決定がなされると、一定要件の下、未払給与の8割の金額について国から立替払いを受けることができます。 従業員のことを真剣に考えるならば、むしろきちんと破産の申立をなし、立替払い手続を採ってあげましょう。

弁護士に頼んでから、破産申立までどのくらいの時間が掛かりますか?
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弁護士のスケジュール次第ですが、緊急を要する場合には、翌日までの申立をすることも可能です。通常は、依頼を受けてから3~5日前後での申立を行っています。

会社破産の場合には、法テラスの利用はできないのでしょうか?
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現在のところ、法人破産については利用ができないことになっています。 但し、個人については法テラス利用が可能ですので、費用が捻出できない場合には積極的に利用しましょう。   

会社が破産した場合、従業員は未払給与の8割を国が立て替えてくれることは分かりましたが、代表者である私は、いったいどのように生活していけばよいのでしょうか。
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残念ながら、代表者の皆様には、従業員のような保証制度は現在用意されていません。

狭い業界の中での破産申立手続となりますので、破産をする場合にも、きちんと各債権者に丁寧なお手紙を書いて礼を尽くすなど、信頼関係の維持に努めていれば、また別の仕事のご紹介をいただくなど、業界の中での生き残りを実現することも可能な場合があります。

それが難しい場合にも、各種助成金等の利用を検討して新たな事業開始を一緒に検討したり、今後の就労についてのご相談にも乗りますし、どうしても生活ができない場合には、やむを得ず生活保護受給の手続支援をする場合もあります。