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Q2.不当解雇(2)

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公開日:2020.02.22

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Q2.不当解雇(2)


当社にとって極めて重要なプレゼンがあり、1人の従業員に任せたのですが、あろうことかその従業員は当日寝坊によりプレゼンに遅刻し、プレゼンを行うことができませんでした。当該従業員の寝坊により、社長である私も大恥をかきました。   

会社としては当該従業員を許せないので解雇したいと考えています。解雇は許されるでしょうか。
A.回答

労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と規定し、解雇権濫用法理を採用しています。これは、解雇という行為が従業員の生活の糧を奪われる重大な行為である点に鑑み、会社の従業員に対する自由な解雇を法律で制限したものです。

労働契約法は平成20年に施行された法律であり、それまではこのような解雇権濫用法理の規定は存在しませんでしたが、最高裁を含む裁判所では、長年にわたり解雇権濫用法理を採用してきており、それを明文化したものがこの労働契約法16条になります。
  

解雇権濫用法理の下では、従業員を解雇するには、その従業員を会社から廃除するのがやむを得ないと考えるだけの合理的理由が存在し、社会一般の感覚からして解雇をするのが相当であると言えるような状況が必要となります。具体的には、重大な刑法上の犯罪行為などがある場合(多額の業務上横領等)には即解雇が認められる可能性がありますが、そうではなく、遅刻や業務上の軽微なミスがあるという程度では解雇は許されません。

こういった軽微なミスが積み重なり、会社としても当該従業員に何度も注意を重ね、それでもなお遅刻やミスを繰り返すような場合に初めて解雇は有効と認められます。余程の事情でない限り一発レッドカードは許されず、イエローカードを何枚も出さなければならないということです。
  

本件の場合、記載されている以外の事情の存否にもよるでしょうが、上記の事情のみでは解雇はまず認められません。   

本件のような分かりやすいケースであれば解雇の可否の判断はできますが、実際の事案では解雇の可否の判断は非常に微妙なケースが多いです。そのため、解雇を行う際には、必ず弁護士など法専門家に事前にご相談いただくことをお勧めいたします。法専門家への相談により、過去の裁判例で近いケースがあることなどが分かれば、解雇の可否を判断する1つの指針になります。

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