公開日:2020.02.22
FAQQ2.割増賃金の計算方法について(2)
実は,次回の給与(当月分)支払時に,1名だけ法定外残業時間について割増賃金が発生する者がいるのです。当月分の法定外残業時間は,終業時刻の18時から2時間程度残業をしてもらった日が,合計で10日間ありました(合計20時間の法定外残業時間が発生)。当社のひと月における所定労働時間数は,平日週5日勤務の9時始業~18時就業(1時間休憩)ですので,160時間です。
そうなると,先程の計算式では,
=2万5000円 が,従業員に支払うべき割増賃金ということになりますよね。
そして当社は,「精勤手当」として,2万円を支払っているので,「2万5000円-2万円=5000円」で,残り5000円を支払えば,法律に従って割増賃金を支払ったことになるのですよね?
貴社の「精勤手当」が,実質的に時間外労働の対価としての性格を有しているといえるかどうかによって,結論が異なります。
いわゆる定額残業代として「●●手当」と称して一定額を支払うことを労働契約において定めている会社も,多いと思います。
ただ,従前の裁判例の集積から,定額残業代が時間外労働の対価としての性格を有すると認められるためには,ア)通常賃金部分と割増賃金部分が明確に区分されていること,イ)実質的にみて当該手当が時間外労働の対価としての性格を有していること,ウ)支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示されていること,エ)定額残業代によってまかなわれる残業時間数を超えて残業が行われた場合には当該賃金の支払時期に精算して不足分を支払う旨の合意が存在するか,そうした取り扱いが確立していることが必要不可欠,とされています。
ア・ウについては,給与明細等に定額残業代に該当する手当について,金額の具体的根拠が明記されていることなどが必要です。
例えば,「基本給」,「通勤手当」などと並んで, 「『精勤手当』・・・2万円(法定外残業時間16時間分)」といたように,記載がなされていたとしたら,この2万円は時間外労働の対価としての性格を有すると認められやすい方向に働くでしょう。
そして,エの点では,貴社の就業規則において,「精勤手当」に対応する残業時間数を超えて残業が行われた場合には,不足額を支払う旨の合意が定められていることも必要です。
昨今,給与の支給について様々な手当を設けている企業もありますが,割増賃金の計算基礎賃金からの除外対象となるのは,労働基準法施行規則所定の手当であり,かつ「実質を伴った」支給方法がなされていなければならない点に,ご注意ください。
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