公開日:2020.02.22
FAQQ3.不当解雇(3)
本件はいわゆる整理解雇のケースです。整理解雇においても、解雇権を濫用してはならないため、解雇は慎重に行わなければなりません。判例は、整理解雇を行うためには4つの要件を満たす必要があるとしています。①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人員選定の合理性、④手続の相当性の4つの要件です。
①人員削減の必要性は、整理解雇である以上、当然必要になります。経営赤字が何年も続いている、会社の売上に対し人件費が相当に高額になっている、不採算部門を閉鎖するなどの具体的な事情が必要となります。
②解雇回避努力とは、人員削減手段として、従業員にとって最も苛酷である解雇という手段をとる前に、よりダメージの少ない他の手段をとる必要があるということです。例えば、希望退職者を募る、役員の報酬をカットするなどの手段です。
③人員選定の合理性とは、誰を解雇するかにつき客観的に合理的な基準を定め、その基準に公正なあてはめをして解雇対象者を決めなければならないということです。人選の基準は、勤務成績などの能力面、雇用形態(正社員かアルバイトかなど)、当該従業員を解雇した場合にその家計への影響がどの程度あるか(夫婦共働きかどうかなど)など、様々な面から決まります。重要なのは、会社が恣意的に従業員を選定することなく、客観性の高い基準となっているかどうかです。
④手続の相当性とは、解雇までに従業員に対して、解雇の必要性、解雇の時期、方法等を十分に説明し、解雇対象者の言い分を十分に聞き、最終的に解雇に納得してもらうなど、会社は従業員と誠意をもって協議を行う必要があるということです。
以上のとおり、①から④の要件の充足が必要となるため、本件では経営不振により①人員削減の必要性が存在するのであれば、残りの②から④の要件を満たす必要があります。まずは希望退職を募るなど、②解雇回避努力を検討し、④解雇につき従業員と誠実に交渉する必要があります。その上で、誰を解雇するかを勝手に決めるのではなく、恣意的な選定とならないように客観的な基準を設け、③人員選定の合理性が認められる場合に、整理解雇が認められるということになります。
タグ: 不当解雇